御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
自分が今どうなっているのかがわからず不安なのだ。

助けを求めるような菫の仕草に、黎はふっと目を細めた。

「大丈夫。菫が怖がるようなことはしないから」

そう言って悩ましく眉を寄せた黎が、菫の頬にかかる髪を後ろに梳いた。

途端に菫の口から声にならない甘い悲鳴が漏れ、黎の瞳に熱っぽい光が宿る。

「思った通り、身体も素直だ」

黎が触れる場所すべてが順に敏感に反応する菫に、黎はさらにキスを深めていく。

どうやら黎はキスが好きらしい。酸素不足で荒い呼吸を繰り返しながら、菫もキスに応え続ける。

そして黎だけでなく自分もキスが好きだと実感する。

黎に教えられるまま舌をからませ互いの熱を分け合うと、それだけで自分が黎の特別になれたような気がするから不思議だ。

「まだ怖いか?」

菫の顔の両脇に肘をつき、黎は菫の顔を覗きこむ。

息は荒く、額にはしっとり汗が浮かんでいる。冷静でないのは菫だけではないようだ。

「少し。でも、平気」
 
本当はかなり怖い。

自分がこれからどんな風に変わるのかが不安でたまらない。

「我慢しなくていいから」

「え?」

黎の唇が菫の目尻をかすめる。

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