御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
「あとはパスタを茹でて冷蔵庫にあるサラダを出して。あ、飲み物ってどうしよう」
 
菫は慣れない黎の自宅キッチンで、遅めのランチを作っていた。

自宅のガスコンロと違いここはIHだ。

使うのは初めてではないが、熱の加減に慣れていないせいで慎重になる。
 
黎と付き合い初めて一週間、土曜日の今日は仕事が休めそうだと黎から連絡があった。
 
黎は十一時頃菫の自宅マンションまで車で迎えに来てくれ、その後ふたりで食材を買いそろえて黎の自宅に戻ってきたのだ。

「えっと、パスタはいつ茹でたらいいかな」
 
黎を思い出すたび大きく跳ねる鼓動をやり過ごしながら、菫はカウンターの端に置いてあるショッピングバッグから、パスタの袋を取り出した。

続けて深鍋に水を注ぎながら、キッチンから少し離れている黎の仕事部屋を気にかける。
 
休日とはいえ海外にも案件を抱えている黎が完全に仕事から解放されるのは難しい。

おまけに金融系のシステム開発とサポートを手がけているのでトラブル対応など急を要する連絡が二十四時間飛びこんでくるらしい。

今も会社から電話があり、三十分近く仕事部屋で対応しているのだ。

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