御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
一カ月程度をかけて週末ごとにATMの利用を止めてシステムの統一作業を行うことが新聞やネットでも頻繁に告知されている。

大規模な作業であり日常生活にも直結しているのだ、滞りなく終わらなければ銀行だけでなく黎の会社の責任問題になるだろう。

「来週末の作業で完了する予定だけど、まあ、今のところ問題はないし大丈夫だろ。気は抜けないけどな」

規模の大きな仕事のわりにあっけらかんと話す黎に、菫の方が焦る。

「そうなんだ。でも銀行のシステムなんて経済に直結してるからプレッシャーがすごいでしょう? 失敗できないもんね」

「ん? プレッシャーのない仕事なんてないだろ」

黎はなんてことのないように答える。

「仕事に絶対はないけど、限りなくそれに近づく努力はしてきた。仕事の醍醐味はそういうことだからな。あり得ない完璧にどれだけ近づけるか。それが楽しいんだよ」

こともなげに話す黎を、菫は見つめた。

気負いなくサラリと話し、充実した表情を浮かべ仕事を楽しんでいるのがわかる。

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