気付いたら有名な婚約破棄のシーンだったので傍観者になってみようと思ったけれど、婚約破棄された悪役令嬢がいい娘すぎたのでちょっとだけ彼女の幸せを願ってみた
「ルミュー殿とシエラ嬢は、正式に婚約を破棄された、ということでよろしいか」

「そうだ」
 この大広間に響き渡る盛大な声で答えた。
 そうか、とディオンが呟くと、つかつかと迷いなくシエラの前に進み出て、そこで片膝をつく。そしてシエラの右手をとり、その甲に口づけをする。
「私と結婚して欲しい」

 ちょっとディオン。暴走しすぎ、いきなり結婚ですか。
 シエラもポッカーンとしているよ。

「ディオン殿。何を血迷っている。その者はリアスト王家に対して不敬を働いた者だぞ。そのような者を妻にするとは、あなたの国の品位が問われるのではないか」

 すっとディオンは立ち上がる。そしてルミューからシエラを守るように、シエラを背にする。

「シエラ嬢が王家に対して働いた不敬とは、具体的にはどのようなものだ」

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