気付いたら有名な婚約破棄のシーンだったので傍観者になってみようと思ったけれど、婚約破棄された悪役令嬢がいい娘すぎたのでちょっとだけ彼女の幸せを願ってみた
「ルミュー殿もご存知の通り、我が国の魔女ユカエルだ。私と共にこの国へ留学しており、シエラ嬢には大変世話になった」

「ご紹介に預かりましたユカエルでございます」
 魔女らしく妖艶に挨拶をしよう、と思ったけれど、その妖艶さって持ち合わせていたっけ? まぁ、とりあえず、それなりに。大丈夫だ、きっとこの黒いドレスが誤魔化してくれるはず。

「ユカエル嬢のことは存じ上げている。彼女が何か」

「ユカエルは、我が国の魔女の中でも非常に優秀な魔女なのです。過去の真実を、皆様にお見せすることができるのですよ」

「ほう。それでは、シエラの数々の悪行が暴かれるということだな」

「そうですね」
 と、ユカエルは上品に笑んで肯定する。
 暴かれるのはジェシカのほうだよ、と思いつつも、それをけして顔に出してはならない。

「ユカエル。皆に真実をお見せしなさい」

「御意」

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