気付いたら有名な婚約破棄のシーンだったので傍観者になってみようと思ったけれど、婚約破棄された悪役令嬢がいい娘すぎたのでちょっとだけ彼女の幸せを願ってみた
 ユカエルは両手の手のひらを上にして、胸の前に出した。すると、何もない手のひらにポワッと水晶が浮かび上がる。

「これが真実を映す水晶でございます」
 言い、念を投じると水晶が光り、さらにその光がルミューの後ろの壁に映像を投影し始める。ユカエルの中の日本という国に住んでいる娘が言うところのビデオ映像、というものによく似ている。

 映し出された映像には、ジェシカが両手を腰にあてて立っている。そしてその向かい側には、両膝をついたユカエル。そのユカエルの目の前には、散らばって破かれた教科書たち。これはどこからどう見ても、いじめっ娘ジェシカといじめられっ娘ユカエルの図。

『さっさと、自分の国へ戻りなさいよ。この忌々しい魔女。この国のことを学んでも意味が無いって気づかないわけ?』

 なんともこの映像は音声まで再生してくれるらしい。そして、その映像を再生しているユカエルはものすごく恥ずかしい。何しろ、自分がいじめられていたことをこの卒業パーティで晒さなければならないのだから。でも、それをけして顔に出してはならない。自分は妖艶な魔女なのだから。

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