気付いたら有名な婚約破棄のシーンだったので傍観者になってみようと思ったけれど、婚約破棄された悪役令嬢がいい娘すぎたのでちょっとだけ彼女の幸せを願ってみた
 すると、他の女子生徒たちの声があがる。
「違いません」
「私たちも見ました」
「ジェシカさんがユカエルさんをいじめているのを」
 なんと、目撃されていたのか。恥ずかしい。

「リアスト王家の者は、我が国の魔女の力を疑うのか」
 ディオンの低く冷たい声。「疑うのであれば、今後一切リアスト国に我が国の魔女の力は貸さない。それでよろしいですね、父上」

 ディオンがバルコニーを見上げると、そこにはリアスト国王とトビンセン国王の二人の姿があった。表に出ているのが二人の姿だけであって、もちろん裏には護衛騎士がぴっちりと張り付いている。

「嘘よ、なんであの二人がいるの」
 ジェシカのその叫びに。
「それは我が国トビンセンに対する不敬と捉えてよいか」
 ディオンの声は、相変わらず冷たい。
 
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