気付いたら有名な婚約破棄のシーンだったので傍観者になってみようと思ったけれど、婚約破棄された悪役令嬢がいい娘すぎたのでちょっとだけ彼女の幸せを願ってみた
 カッコイイ、カッコイイよシエラ。悪気を一切感じていないところ、自分が正しいと思っているところが、まさしく悪役のようだ。

「君は、ジェシカの教科書を投げ捨てた」
 皇太子殿下の名前を紹介するのを忘れていた。このクソ殿下はルミューと言う。

「そうですね」
 彼の言葉に、シエラはニッコリと肯定する。

「認めるのか」

「認めるのではありません。事実です。事実ですから今ここで言われても、痛くもかゆくもありません。それから、私は何をしましたか。まさかそれだけのことで婚約破棄されるわけではありませんよね」
 両手を前で重ね、優雅に尋ねるシエラ。少し切れ長の目、そしてやや吊り上がった眉。黙っていれば、その顔つきから誰もよりつくことができない、と言われている。でも、ユカエルは知っている。

「もちろんそれだけではない。このジェシカに何をしたか覚えていないのか」

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