褒めて愛して支配して
「これ、俺の」
「あ、はい……」
柏木の声が鼓膜を揺らした。彼が来る前まで俺で遊んでいた男子たちが逃げるように立ち去るのを、床に伝わる僅かな振動や遠のく気配、足音で察しながら、未だ頭を踏まれている俺は本能で柏木を求めた。柏木。柏木。褒めて。柏木。俺を。支配して。柏木。俺を。柏木。
柏木の視線を感じる。柏木は何も言わない。柏木の足が退く。柏木は何も言わない。柏木が屈んだ気配がする。柏木は何も言わない。柏木が髪を掴む。柏木は何も言わない。柏木が顔を持ち上げる。柏木は何も言わない。柏木と目が合う。柏木は何も言わない。柏木が唾を飛ばす。柏木は何も言わない。柏木の口端が上がる。柏木は何も言わない。柏木が顔を寄せる。柏木は何も言わな
「"Come"」
は、と息が漏れた。跳ねる心臓。囂しい心音。俺のリアクションを待たずに乱暴に手を離して立ち去る柏木に少しでも早くついて行こうとする俺は、顔に飛ばされた唾を拭うことも忘れてふらふらとその場を立ち、先を歩く彼の後を追った。散乱した教材や筆記用具を拾うことすら許されなかった。
「あ、はい……」
柏木の声が鼓膜を揺らした。彼が来る前まで俺で遊んでいた男子たちが逃げるように立ち去るのを、床に伝わる僅かな振動や遠のく気配、足音で察しながら、未だ頭を踏まれている俺は本能で柏木を求めた。柏木。柏木。褒めて。柏木。俺を。支配して。柏木。俺を。柏木。
柏木の視線を感じる。柏木は何も言わない。柏木の足が退く。柏木は何も言わない。柏木が屈んだ気配がする。柏木は何も言わない。柏木が髪を掴む。柏木は何も言わない。柏木が顔を持ち上げる。柏木は何も言わない。柏木と目が合う。柏木は何も言わない。柏木が唾を飛ばす。柏木は何も言わない。柏木の口端が上がる。柏木は何も言わない。柏木が顔を寄せる。柏木は何も言わな
「"Come"」
は、と息が漏れた。跳ねる心臓。囂しい心音。俺のリアクションを待たずに乱暴に手を離して立ち去る柏木に少しでも早くついて行こうとする俺は、顔に飛ばされた唾を拭うことも忘れてふらふらとその場を立ち、先を歩く彼の後を追った。散乱した教材や筆記用具を拾うことすら許されなかった。