カリスマ美容師は閉ざされた心に愛をそそぐ


 名前を呼ばれれば、呼ばれる程勘違いしそうになる私。


 優しい声が耳に届くたびに、心臓がギュッとなり、昔、心の奥の奥の底に沈めた何かがユラリと動く。


 一瞬すれ違った女性に“ キッ ”と睨まれてビクッとなり、現実に引き戻どされ、辻本さんは私とは生きる世界の違う人なんだと……


 勘違いするなわたし。


 ほんの少しだけ縁があっただけ。


 地味な私を好きになってくれる男性なんて存在しない。好きになってくれた人は空高く。


 忘れられない人…



 冬の冷たい風がいつも以上に、私の心の温度を下げていく。


 こんな私でも人の温もりが恋しい時もある……好きな人に触れたい、触れられない。


 二人の間を冬の冷たい風が邪魔をする……。
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