カリスマ美容師は閉ざされた心に愛をそそぐ


 厨房で良かった、僅かな隙間から思わず中から女性を見てしまう。


  あれ?一瞬こっちを見てニコっとしたような?

 気のせいだろうか。私がジット見つめすぎたせい。


 「月ちゃん、塩入れてくれたー」


 おじさんの声で我にかえり


 「ごめんなさい、直ぐに入れます…」


 油の中に急いで片栗粉で絡めた塩からあげを4つ入れる。待たせてしまう!


 今は仕事中、何やってるの!


 「配達の弁当用意出来たよーー」 

 
 ドクン…。


 無理だ…。





 「かよさん、配達お願いしてもいいですか?」


 あの女性がまさかの来店で、その上辻本さんと会うかもしれないと思うと、どうしても足が動かない。


 なぜなのか?自分でも分からない…


 なんで、こんなにも心が落ち込むの。


 かよさんは何も聞かず心良く配達に行ってくれた。


 『はい、W弁当2個どうぞ』


 「わ〜、いい匂いありがとう」


 女性のウキウキした声。振り向けばまた視線を感じる。

 なんだろう、私が何処がおかしいのかな…。


 ふぅー。と下を向いて息を吐く、何だか疲れた。


 『ありがとうございましたー!』


 おばさんもいつものように、お客様を見送った。
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