カリスマ美容師は閉ざされた心に愛をそそぐ


 仕込みの時間、午後からの為にキャベツの千切りをスライスラーで、いつものようにやっていたのに。


 “いっ、たぁっ…”


 右手の小指の先を少し切ってしまい、血だらけになっていく私の指。



 「月ちゃん!血!」


 “あ!”、一瞬意識を失っていたかのような私…



 急いでかよさんが絆創膏を貼ってくれる。


 それでも後から後から血が滲む。



 かよさんが心配そうに、私の顔を覗き込み。


 いつもはやらないことを、何を考えいたのだろう。


 やっと指の痛みが伝わってくる。


 「大丈夫?ランチの時間から様子が変よ。顔色が悪いわ、ここは私がやっておくから、休んだほうがいいわ、ね、月ちゃん?」


 心配させちゃったぁ〜…、私は後をお願いしますと、精いっぱいの笑顔を向ける。


 階段を昇り、自分の部屋のドアに寄りかかり、顔を天井に向け心の中で大きなため息をつく。


 あの女性は本当にキラキラしていた、好きな人に愛されているとあんなにも、違うものなのか?


 堂々としていて、私も昔はキラキラしていたのかなぁ…


 あの女性のように。

 
 私は恋がしたいの?デモ失ったら…。


 こわいな…、自分の心を見るのが。


 自分がどんどん惨めになっていく。


 自分で自分の心を抱きしめるしかなかった。


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