カリスマ美容師は閉ざされた心に愛をそそぐ

 “痛いし…、重い…”


 やっとの思いでまぶたをゆっくりあけ、目の前にはネコの殿ちゃんのお腹。


 殿ちゃんのりっぱなお腹が私の顔に寄りかかっている。


 両手がお腹をグッとおせば顔を向け、
“ウーン”と鳴く。


 ニャーでは無く我が家のネコはウーンと鳴く。


 その声のトーンが面白くて、疲れていても、ちょっと落ち込んでいる時も、その声を聞くと自然に笑いたくなってくる。



 そしてギュッと抱きしめて、パワーを貰い元気になってきた私。


 それが今の私はいつもと同じことをしても、元気が出てこない。


 殿ちゃんの顔に向かって大きなため息を吐き出せば、ちょっと迷惑そうな顔。


 もう少しこのままいつもより、元気になるのに時間が掛かりそう。


 まるで私の気持ちが分かるのか、大人しく抱きしめられたまま。


 “ネコになりたい…”


 そう思ったことは一度ではない。


 今はいつも以上にそう思う…。



 “逃げたいのかな…わたし…”

 何から……




 
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