カリスマ美容師は閉ざされた心に愛をそそぐ
逃げごしの私と、不思議な天気
私の耳もとで辻本さんの小さなため息がもれてくる。
ため息の意味は?
「…あ、の…」
『ごめん、体調が悪いところに、勝手におしかけて、どうしても顔が見たかった』
「心配させて、すいません。でも大丈夫ですから」
“やさしく、しないで”
「あ、顔見ないで下さい、殿ちゃんにベロベロなめられて汚いんです、今夜は寒くなると天気予報で言ってましたよ。だから…」
何故、こんなに私はおしゃべりになってるの。
『わるい、もう少しこのまま、話しを…』
辻本さんの言葉をさえぎるように。
「どうして…、心配をしてくれるんですか、もしかして…私…、可哀想に見えますか?」
『…ち、ちが…!』
「意地悪なことを言ってすいません、心配してくれたのに。っあ、勘違いとかしませんから、大丈夫ですよ」
「ちょっとやさしくしてもらったからって、ね」
声が震えそう、でも出来るだけ明るく。いつまでもこの腕の中に甘えていてはダメ。