カリスマ美容師は閉ざされた心に愛をそそぐ

 いつもより街が騒がしい。

 いつの間にか寝ちゃったんだ、そーか〜今日は日曜日だから、裏道まで沢山の人の声が聴こえてくる。


 休日ともなれば人も車も多くなる、明るい声からは寒さなんて感じられない。


 それどころか夏のような熱気が伝わってくるみたい。


 春はそこまで来ているのに、私の心はずっと冬のまま。


 どうしてこうなった?後ろを振り返っても思い出すだけむだかなぁ…


 不意に机の上のハサミを手に取り、髪をジョキン、ジョキンと。


 あ!右がちょっと短くなっちゃった。


 鏡に映った私の情けない姿。


 “何やってんだろう…”


 何やってんの、どんどん惨めになっていく。


 今日はこの街にいたくない、どこでもいい静かな所へ行きたいな。


 髪が不揃いの姿で、街を歩いても回りは会話で忙しく、私を見ている人なんていない。


 電車に乗り適当な駅で降り、“あ、風が強い”

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