カリスマ美容師は閉ざされた心に愛をそそぐ


 静まり返った部屋に聞こえてきた声。


 『月ちゃん、かわい~~い、ショート良く似合ってる!』


 その声で少しずつ自分を取り戻してきた。


 “私がかわいい!!、そんなこと思ったこともない…”


 辻本さんの彼女はなんで、そんなことを言うの??


 自然と目から何かが流れ、白いケープに一つ、また一つとシミを作っていく。


 「月、な、なんで、泣いて!!」


 そんなの…私にも…わかんないよ!

 ケープを外された瞬間、私は立ち上り逃げようとした。


 でも、結局、辻本さんの腕に引き寄せられて。


 “……離して!!”

 「髪をカットしてほしいなんて、誰も頼んでない!!!」


 さっきより強く抱きしめられる。

 「無理やり髪を切ったことは、謝るつもりはない」


 冷静で強い声。


 それでも私は…


 「……はな、して、よ、もう私に構わないで!」


 「頼むから、俺の話を聞いてくれ!!」


 これ以上惨めになりたくない、どんな言葉も聞きたいない…。


 

 

 
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