カリスマ美容師は閉ざされた心に愛をそそぐ
心の不安 1

 “穴があったら入りたい”とはよく言ったものだ。

 イヤ、私の場合は“大穴”かなぁ…

 さっきまで修羅場だったのに、今はニコニコ顔の辻本さんの膝の上で、『ギューッ』と抱きしめられている。


 テーブルを挟んで、目の前の二人の視線も気になるし、恥ずかしくて早く降ろして欲しいのに。


 目の前の女性が彼女だと思っていたのにまさかの、辻本さんの『お姉さん』だったなんて……。


 知らなかったとはいえ…ハァァ…。


 朝日さんの言葉で身体中の力が抜けて、倒れそうになり辻本さんがビックリして支えてくれて。

 
 その後は自分でも分からず、大声をだして泣いて…泣いて…


 あぁ~~、やっぱり大穴が欲しいよ。


 辻本さんは私が落ち着くまで、背中をゆっくり撫でながら、ずーと抱きしめてくれた。


 そして、何度も、何度も、耳元で。


 「好きだ、月が誰よりも好きだ!」と。


 私に言い聞かせるように、心に染み込むように。


 二人が見ている前で、涙も乾かないうちに、シッカリ“キス”までされ!!


 それも、いや、キスは初めてではないけど、あんな大人のキスなんて、思い出しても顔が赤くなる…あーもう!恥ずかしよ!!


 

 
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