カリスマ美容師は閉ざされた心に愛をそそぐ
『ほら!、おいで』甘い声で私を呼びながら、優しい手を差し出してくれる。
“おいで!”私にとって一番嬉しい魔法の言葉。
◇◇◇
「『月、おいで!』」
「ヒ…ロ…、」思わず辻本さんと昔の彼氏が重なり、その名前を口に出しそうになって、グッと飲み込んだ。
「ヒールなんて、初めて見た。月の細い足に良くあうよ。でも今は立てないだろう」
辻本さんからの言葉一つ一つが、私の中の眠っていた“大翔”を思い出す。
「ほら、両手をだして」
今日は長い一日だったような気がする。朝日さんとの出合い。
辻本さんからの告白。
私の大きな勘違い…。
彼の手を取り温かい胸の中へ引き寄せられる。
この温かさに、ホットしたのはいつぶりだろう…
安心したのか、私は自然と意識を手放した。
あの頃へ…。