カリスマ美容師は閉ざされた心に愛をそそぐ

 今日も疲れた〜。

 スマホを何気なく見てみれば、実家の母から着信が入っていた。


 滅多に連絡なんてしない母から、だから何かあったのかと心配にもなったけど、出来る事なら避けたい。


 仲が悪いわけではないけど、何となく……。


 溜息を大きく吐き出し、えいっと電話をしてみる。



 直ぐに電話に出た母は突然…


 「見合い!ちょっと待ってよ!お見合いなんてするつもりなんてないよ!」

 少し怒った声で…


 『何を言っているの、もう月は27才よ分かっているの?いつまでも若くないの。東京にいても彼氏の一人も出来ないでしょう?』


 言い返せない…

 何とか理由をさがし。

 「私は弁当屋の仕事が好きなの!」


 『弁当屋の仕事なんて、こっちでも仕事は出来るでしょう?』

 あ〜もう……!


 『東京にいる理由にはならないわ、それに実家に居るときと月は何か変わった?何も変わっていないでしょう?見た目も、服装の好みも』


 本当の事でそれ以上何も言えず、それでも声を振り絞り。


 「見合いはしない」とキッパリ言い切った。


 母はだったら東京なら直ぐに彼氏くらい出来るでしょう?


 二週間以内に彼氏を作り、連れて来なさい!


 それが出来ないなら連れ戻すわよ、いーわね!!と電話を切った。



 二週間以内なんて無理だよぉ……。


 見合いはきっと避けられない。


 どうして一人ではいけないの…


 実家に帰りたくない、溜息しか出ない私の頭の中に浮かんだのは。


 大翔ではなく…



 ……彼だった…

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