カリスマ美容師は閉ざされた心に愛をそそぐ

時間〜とき〜


 自分の中では、時は止まっているのだと、止まっていてほしい、それが願いだった。

 何も感じたくない、何も見たくない。

 そんな私の手を無理やりとり、暖かい腕の中でしっかりと抱きしめられ、心臓の音がドクンドクンと耳に聴こえてくる。

 時は流れていた。

 季節が変わって行くように、私も変わっていた。


 私を抱きしめた暖かく、力強い腕の中は何よりも落ち着き、ほんの少しでも離れたくない。

 毎晩その腕に抱かれ幸せな朝を迎え。

 一緒に私の作った朝食を美味しそうに食べてくれる。

 こんな何気ない幸せな日常が、私は過ごせる時が来るなんて、想像さえしなかった。


 一緒に手を繋ぎ、蓮さんは美容室へ、私は今日もちょっと懐かしい匂いと味が自慢のお弁当屋へ。


 「月ちゃん!!、唐揚げ弁当一つ!」


 『唐揚げ弁当一つ、お願いしま〜す』


 明るい声と笑顔が、最高の味付け。

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