月の砂漠でプロポーズ
 運転手さんが連れて行ってくれたホテルは、人工島、パームジュメイラに建つ、東洋と西洋が融合した豪華なリゾートホテルだった。

 白亜の城と言っていい外観。
 エントランスに入ると、数十メートルはありそうな吹き抜けに、つい口を開けたまま見上げてしまう。

 白のアラベスク文様の壁に、豪華なシャンデリア。
 白の大理石の床とあいまって、絢爛豪華でありながら、荘厳である。
 い、五つ星ではないだろうか?

 ……ちょっと待って。

 ロビーのソファに座りながら、スタッフにチェックイン手続きをしてもらっている諒さんをみて、思いついた。

「待たせた。スパでもいくか? 屋内プールで体をほぐすのもアリだが、也実はどちらがいい」

 んー……。体をほぐしてからスバのほうが眠れそう……。

「まずは体を動かしたいです」
「わかった」

 直射日光が入らないように、けれど十分に明るい陽光が入るサンルームのプールで体をほぐす。
 凝り固まっていた体の隅々まで神経が届くようになった気がする。

 ゆったりと二十五メートルくらいを何本か流して、プールデッキに何基もあるチェアに座って、喉を潤した。

 隣は見ないようにする。
 諒さんがっ、水着なのだ!
 いや、プールサイドでスーツ着ているほうが変とはわかっているが。

 濡れた肩。顔や首に張り付いた髪を煩そうに搔きあげる。
 そのたびにしなやかに動く盛り上がっている胸筋、割れた腹筋。
 逞しい腕。
 足長いよー、絶対ジーンズ裾つめたりしない。

 ちらちらと欧米人みたいな人達が諒さんを盗みみているほど美しいのだ。

 見たい。見れない。見たい。見たら鼻血が出そう。葛藤に悩まされていると。

「也実? 大丈夫か」

 ぽたり、と彼からの雫が私に落ちる。

 切れ長の瞳に上からみつめられて、心臓が止まりそうになる。
< 102 / 127 >

この作品をシェア

pagetop