月の砂漠でプロポーズ
 シャワーを浴びただけで、もう目が閉じかけている。
 ふらりと体が揺れた。

「おっと」

 がっしりした腕に繋ぎ止められて、ますます体から力が抜けていく。

「也実、こっちだ」

 諒さんに肩を抱かれスパに移動する。

 別にいいんだけど。諒さん、最近スキンシップ多くない?
 嬉しいからいいんだけど。
 今は眠くて、心臓もドキドキする余力がないみたい。
 寄り添っていたいのは事実で、このぬくもりを手放したくない。
 なのに、いつかなくなるときがくると思うたび、襲ってくる痛み。
 それも今は微かだから、いいんだけど。

 彼は、ねぼけまなこな私をスタッフに引き渡した。

「あとで」

 ちゅ、と濡れた感触が頬にあった気がして、束の間目が覚めた。

 さっき買ったサンドレスをもう一度脱ぐ。
 バスローブを羽織って、施術室へ入った。
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