月の砂漠でプロポーズ
 イスラムでは男性は女性の魅力に弱い。
 女性のほうが性的魅力にあふれているとされていて、女性を隠すことは、誘惑から男性を護る為なのだとか。
 大切なものはやたらと見せるのではなく家族にのみ見せるべきとかという意味もあるそうで。

「おおいに賛成だ」

 諒さんが力いっぱい同意した。

「……諒さんほどの男性でもですか」

 じとぉん。

 にらんじゃう。
 もてるのは感じてるけれど、まさかの女性に弱い発言。

「違うよ」

 諒さんは笑ったあと、熱を込めた声と欲に燃えた瞳で私に告げた。

「也実限定だ。君の美しさ可憐さを、他の男に見せたくない。愛する女性を家に閉じ込められないなら、せめてその魅力を隠してしまいたい。その気持ちは実によくわかる。俺もそうだから」

 私は髪を隠すスカーフを貸してもらってよかったと思った。
 こんな独占欲を見せられて、潤んだ目や火照った頬を他の人には見せられない。
 俯いてしまった私に、諒さんは満足げな声でささやいてきた。

「俺にだけ見せてくれ。君の魅力も、艶めかしい姿も、俺と君の二人の家の中で俺だけに」

「…………ハイ」

 だめだ。
 外の気温より、諒さんの熱にやられた。
 乞われるように言われて、私には『YES』しか選択肢が残されていなかった。
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