月の砂漠でプロポーズ
時間ぴったりに、ごっつい車が横付けされた。
 四駆という奴だと思うんだけど、綺麗ではない。
 流石に砂まみれではないけれど、歴戦の勇者っぽい。
 そして……。

「砂漠!」

 砂漠といっても砂だらけの砂丘のところもあれば、岩がゴロゴロ、水が少ない地域でも生きられる植物がちょろっと生えているところも砂漠である。

 目の前の風景は真っ青な空の下、黄色の砂丘だった。
 
 ドライバーさんが不思議なことをしている。タイヤの空気を抜いているのだ。
 車に乗り込むと、諒さんは私にシートベルトを装着させた。
 そしてバンダナで口と鼻を覆うように言われた。
 勿論、自分にも装着している。

 始まったのはデザートサファリ。
 砂丘を四駆で駆け上り、駈け下りるのだ!

 ジェットコースターよりもワイルドな上下運動に放り込まれた。
 口を開いたら舌を噛みかねない。
 シートベルトをしていても、座席からお尻が浮き上がる。
 そして、谷底に落ちるような感覚が襲ってくる。

 パリーダカールラリーってこんな感じなのかな?

 なんとか隣を見れば、諒さんが愉快そうにけれど、私から眼を離すまいとしている。
 なにかあれば助けてくれるという安心感が私をリラックスさせ、それからは楽しめた。
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