月の砂漠でプロポーズ
寒い。
 ぶるりと震えたら、上着をかけてもらった。
 温かくなる。

「砂漠の夜は冷える」

 そうだった。

「これからホテルに移動する」

 四駆はあれだけやんちゃをした車と同じとはとても思えず、静かに砂漠の中を走っていく。
 振動が心地よくて、また寝入ってしまった。

「也実、起きて。到着したよ」
「え?」

 ふわりと体が浮く。
 またしても、抱っこされているらしい。
 けれど、砂漠の中で松明に映し出されたヴィラの美しさに、下ろしてというのを忘れてしまった。

「ぐっすり寝入っているところを起してすまない。ベドウインのテントを模した、この光景を也実に見せたかったんだ」

「ううん。起こしてくれて、ありがとう……」

 この美しい光景を見ずにホテルに入ってしまったら、私は後悔しただろうな。
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