月の砂漠でプロポーズ
タイル張りの浴槽にはバラの花が浮かべられている。
 ほう……とため息をつきながら、香しい湯に体を沈めた。

「逃がしてくれるんだものなぁ……」

 諒さん。
 この何日か肌を重ねてけれど、今日は特別な夜になる予感がする。
 丁寧に髪をパックし、肌も磨き上げた。
 車に揺られた疲れも取れ、ホカホカになってバスローブに身を包む。

「俺も入ってくる」

 ぽんと肩を叩かれた。
 ベッドには金糸で刺繍された、紅いゴージャスなドレスがある。

「勝負どきでしょ」
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