月の砂漠でプロポーズ
「え、こんなに綺麗なのに?」

 言ってからきづく。
 そういえば家全体が、少しほこりっぽい。
 まるでしばらく人が住んでなかったような。

「海外を飛び回っていて、あまり手入れが出来てないんだ。備品の補充も頼む」

「わかりました。職務に料理は含まれますか?」

 聞いたら、目を瞠られてしまった。 

「出来るのか」

「んー、インスタントに毛が生えたくらいです」

 人並みってどこからが『平均』って言うのかな。
 自炊は貧乏生活には必須だ。

「……そうだな。俺は必要ないが、君は警察の呼び出し以外は外出しないほうがいいだろう。自炊できるなら、必要な機材も購入してくれ」

「ありがとうございます。では早速始めます」

「よろしく頼む。俺はオフィスに行く。来る用事はないだろうが、あのビルの四八〇五室だ。連絡先を交換しておくが、なるべくかけてこないでほしい」

「……はい?」

 ひ、ヒルズに家を持ってるだけではなく、ビルにオフィス?
 どれだけお金持ちなのかな、この人!

「高畑さん? どうした」

「渡会さんがセレブ過ぎてびびっているだけです」

「俺がセレブなわけじゃない。単に俺の爺様がここのオーナーってだけ」

「いや、資格充分過ぎですよ。……ん?」

「なんだ?」

 …………なんか、聞き捨てならないことを言われた? 
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