月の砂漠でプロポーズ
 渡会さん宅で引き籠り生活三日目。
 外に出られない生活は落ち込むかなと思ったら、意外と快適だった。
 生活雑貨はインターネットで届くし、掃除しているので運動不足にはならない。
 一日八時間も掃除をすれば、私にと貸してもらった客室は見違えるようになった。

 ざっと見た限り、一番使ってなかったのが客室で、渡会さんの家で一番汚れているのが客室だった。

 ちょこちょこ生活に関わりのある場所を使える程度に掃除しながら、夕方には終了。
 明日の一日分のごはんを作りつつ、許可を貰ってあるので渡会さんの蔵書や映画を見せてもらっている。

 法律の本ばかりかと思ったら、各地の写真集が多い。
 棚には現地の人や景色を映した写真にまじって、海外の小物が置いてあったりする。

「渡会さん、旅が好きなのかな」

 国際弁護士って言ってたもんね。
 それってばなんぞやと思ったけれど、国際運転免許証みたいなものはなく、外国の弁護士の資格をもっていたり、海外案件をてがけることが多い弁護士が自称しているらしい。

「ふーん……」

 渡会さんについていって、彼の仕事をアシスト出来れば、どんなにいいだろう。
 今日はアフリカ、明日はギリシャ。渡会さんの隣でそんな暮しが出来れば。

「て、無理! なにを読迷い事を言ってるのかな、私!」
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