月の砂漠でプロポーズ
『高畑さん。林が、貴女が仕事をする直前に顧客の家に無断侵入していた画像が出ましたよ!』

 刑事さんから朗報があったのだ。

『しかし、高畑さん。いい仕事してましたね』

 褒めてもらった。
 私はただ、私が掃除を行う前後のガス・電気・水道の各メーターの使用量を控えておいただけだ。

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 警察と渡会さんが要請し、各エネルギー会社がクライアント宅の使用量が林が出入りした時間と一致するのを突き止めたのだという。

 時間切れだ。
 私が事件に関わっていなかったと証明された以上、この家にはいられなくなる。

 渡会さんには感謝しかない。
 おうちを綺麗にして、渡会さんの恋人にバトンタッチするのだ。

 涙を堪えながらドアを開こうとした。
 開かない。
 押してだめなら引いてみろ。
 あ、引き戸だった。

「!」

 広がっていたのは和室だった。
 押し入れと畳しかない。

「ここで寝てなかったの?」

 もしかしたら、私が寝泊まりさせてもらっている客室が渡会さんの寝室だったのかな。

 でも、クローゼットのなかには彼の私物らしきものはなかった。

 ……寝るのはもっぱら彼女宅で、この家は気の置けない友人達との遊びスペースなんだろうか。
 なら、入ってやる!
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