月の砂漠でプロポーズ
 私が空港から警察に連れていかれたあの日から、一か月半後。

 林は国際指名されたことを知ってか知らずか、のこのこ帰国したところを警官に任意同行を求められた。

 証拠を突きつけられた林は、私の名前を勝手に用いてハンコを押したこと。
 男性陣の名前を騙って彼らの家に無断侵入したことを認め、あらためて逮捕されたと訪れた渡会さんから説明を受けた。

 彼に椅子とお茶を勧める。……渡会さんちで店子が大家をもてなすのも変だけれど。

「動機は『同級生(オレ)達が羨ましかった』そうだ」

 渡会さんが苦いものを呑み込んだような顔で教えてくれた。

 彼によれば林の家は裕福だったが、卒業間際に倒産したそうだ。
 進学を諦めざるをえなかったが、クラスメートには海外留学が決まったとうそぶいていたらしい。

「倒産のニュースは学校の奴らは皆、知っていたが林の気持ちもわかるから、納得したフリをしていた」
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