月の砂漠でプロポーズ
『いまどき旅のしおりを作るなんて、子どもか!』と言われることの多かったノートをそんな風に評価してくれるなんて。

「ドバイ以外も読ませてほしい」

 私。
 渡会さんが旅が好きなのかな、と思ってからあのノートをずっと見せたかった。
 彼と一緒のソファに腰かけて、互いの撮りためた写真を見せあいながら、旅して見聞きしたことを話し合いたかった。

 渡会さんを見て、私はしっかりと答えた。

「はい。やらせてください」

「じゃあ、明日からハウスクリーニングを午前中にしたら、午後に俺のオフィスに来てくれ」

「はい! ……あの、渡会さんは家に帰ってきますか」

 どきどきどきどきどき。
 甘く、うるさくなった心臓をかかえながら私は聞いてみた。
 すると、渡会さんは目をそらしてしまった。

「いや。俺は潜り込める寝床は他にあるから。大丈夫だ」

「デスヨネー」

 なんとか棒読みで答えたものの。

 ……………………がっかりした。ものすごく。
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