月の砂漠でプロポーズ
 久しぶりに踏んだ日本の地。

 実家に帰ると、見合いだのうるさいから隠れ家で休暇を堪能する筈だった。
  空港に降り立ち、携帯電話の電源を入れた途端、高校のときの同級生から泣きのメールが入った。それも複数。

『林に騙された』
『美人局に遭った』
『なんとかして欲しい』

 俺の専門は民事でも刑事でもない。企業法務に携わっていることが多い。
 要領を得なかったが、理路整然としていた奴らが一様にパニックに陥っていることは理解でき、弁護士というだけで縋りたくなる出来事があったのだと推測した。

 一番親しかった奴に連絡をとれば、林に名前を騙られて自宅に不法侵入された。
 挙句に林は、女性を騙して金を奪い取り逃走中なのだという。

 元同級生はそれなりの地位におり、名前と職業を検索すれば、すぐにNETに該当が何件もヒットする。 林に騙された女性が、彼の職場へ乗り込んできたそうだ。

 曰く、『林が騙った連帯責任をとれ』と主張されたという。
 無茶苦茶だ。

 他の同級生に確認すれば異口同音、同じ被害に遭っていた。
は共犯と目される女が警察に任意同行されたと聞いて接見を申し込んだ。
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