月の砂漠でプロポーズ
「……彼女が林の共犯であればいいのに」

 民事であれば、連帯保証人となっているというから即刻返済を請求できることが出来る。

 刑事であれば、高畑という女性が主犯であってほしいと願った。

 学生時代、林と仲が良かったわけではないが、知り合いが犯罪者であっては欲しくないという心理が働いた。

 取り調べ室にいたのは地味な女性だった。
 化粧っけもなく、適当なシャツとチノパンを履いた出でたち。
 疲れた表情は演技かもしれない。

 内心はどう思っていたのかわからないが、表情の変化に乏しく『彼女こそ主犯なのではないか』という期待がよぎった。

 しかし予想外に業務内容を熱く語る姿からは、仕事に対する誇りや責任感を聞き取れた。
 雇用主である林について述べる彼女をみているうち、彼女も林の被害者だったのかもしれないという仮想を思いついた。

 携帯の中の画像やパスポートの出入国スタンプを見せながら想い出や旅に対しての考えを嬉々と話す彼女は、被害者が林から説明を受けた『義理の妹である高畑也実が業務拡大したがっている』ようには思えなかった。

 むしろ、彼女は拡大した業務に疲弊をしていた。

 勿論、『資本金が足りない。妹が僕の恋人に力を貸して欲しがっている』ようには、とても見えない。

 話を聞いているうち、その思いがますます濃くなる。
 見れば、知能犯達を追い続けている刑事も頷いている。
 彼女はおそらく『シロ』なのだろう。
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