月の砂漠でプロポーズ
 家のしがらみに縛られず、個人で生きたい。
 どうしようもなく自由で、色々なところを旅したい。
 執愛に似た、そんな俺の気持ちを。

 実家に頼ることなく、海外でも生きられるすべとして弁護士を選んだ俺の選択を理解してくれるのではないかと。

 高畑さんの無実を証明するには、林の単独犯である証拠が必要だ。

「林が高畑さん名義の印鑑を購入して、勝手に名前を使った可能性がある」ことを実証しようとしていたときには、林が有印私文書偽造したと確信をもっていた。

「それと、『偽造文書行使罪』ですね」

 刑事が高畑さんに見えないように、口でパクパク言っていて、俺も目で同意を返しておいた。

 有印私文書偽造罪が立証されれば、三月以上五年以下の懲役。そして、偽造有印私文書行使罪も同様。

 偽造した文書を使って他人と契約を結んだとみなされるから、詐欺罪が成立する可能性もある。
 詐欺罪の法定刑は十年以下の懲役なので、持っていき方によっては合わせ技で長くぶち込める可能性も出てきた。

 ――俺は林の敵にまわった。
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