月の砂漠でプロポーズ
『出待ちされてるって言ってたじゃないですか。追いかけられるのも面倒ですし』

 俺は。
 彼女が俺に愛されたいと思っているまなざしを向けて欲しい。

 不審げに俺を見る彼女に、湧き上がる衝動を抑えるのに苦労して無言になった。

 なぜ彼女にだけ、こんなにも余裕がない。

 着替えた彼女を見るまでは、ホテルに泊まらせようと考えていた。

 オフィスのあるインテリジェントビルの高層階はホテルになっていて、支配人である父の部下に高畑さんを任せようと思っていた。

 だが、助手席に座っている彼女をそのまま、俺のテリトリーに囲いたくなってしまった。

 レジデンスに到着し、部屋を一つ一つ説明するたび、高畑さんの反応が気になる。

 さすがに己の寝室を見せるのは面はゆくて、そこだけは避けた。
 ……ドアを開けた瞬間、彼女にのしかかりかねなかったからだ。
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