月の砂漠でプロポーズ
「綺麗といえば、高畑さんのいまの恰好はクリーニングスタッフとは思えないエレガントさだな」

 うわ、直球きた! 

 こういうとき、渡会さんて慣れているなあと思う。『おはよう』という挨拶くらいに褒め言葉がするりと出てくるのだ。

 オフィスカジュアルにはふんわりしすぎだが、ワンピースや足首まであるスカンツなどを着て出勤している。
 トランクの中がバカンス仕様だったのだ、仕方ない。

「着慣れなくて……」

 もごもごとつぶやけば、とんでもないことを言われた。

「だったら制服代わりに服を買っていい。必要経費だ」

 雇い主様ったら、太っ腹! 
 およそ中年太りとは一生縁がなさそうだけど。

 でもなー、渡会さんのカード履歴にスリーサイズとか。
 下着のサイズが記載されてしまうのは避けたい。
 いや、たぶんね?
 洋服はおろか下着とかも贈りなれているとは思うのだけど。

 なんだか服を通り越して、心の中まで見透かされてしまいそうで。……という謎の理由から、トランクの中身で遣り繰りしている。

「俺は目を楽しませてもらっているからいいが」

 あー、うー。

「あのですね、渡会さん。女性にリップサービス乱発していると勘違いされますよ?」

 特に私に。

「事実しか言ってない」 

 ………………撃沈。 
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