月の砂漠でプロポーズ
「立てますか?」

 声をかければ、「ん……」といいながら、なんとか起きあがってくれた。
 色っぽいー、だめだ、病人にムラムラしてしまうなんて! 色即是空! 違う、多分、心頭滅却。

 渡会さんの腋の下に自分の肩を入れる。
 彼の携帯とタブレットを、クッションの下から取り出した分厚い鞄にいれた。
 持ち手に紐を結んで、斜めがけにする。

 自分より大きくてなかば意識のない男性と、数キロはありそうな鞄は正直言って重い。
 でも、渡会さんにベッドに寝て貰うんだ、頑張る!

 よろよろと戸口へと歩き出す。

「オートロックでよかった……」 

 人一人支えたまま、鞄から鍵を取り出して施錠することすら難しい。

 ビルからレジデンスまで、どこをどうやって歩いたか、憶えていない。
 でも、ビルの警備員さんがレジデンスの警備員さんに連絡してくれするたみたいで、エントランスから玄関まで手伝ってもらえた。

 どさりとベッドに渡会さんが転がってくれ着替えるまもなく、すー……と寝入ってしまった。

「早く治って」

 髪を撫でる。

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