月の砂漠でプロポーズ
「知っているだろうが、ドバイはイスラム教を信仰している」
「はい」

 酒は市内のレストランで飲んではいけないとか、女性は肌見せ禁止。
 あとは未婚の男女の同じ部屋での宿泊とか同棲とか禁じているんだっけ。

「勿論、欧米人は夫婦別姓とか普通にいるから、五つ星のホテルなどはそこまで観光客にはうるさくはない」

 うん。

「だが口先だけ妻と言っても、令嬢が信じない性格なんだ。夫婦別姓、おまけに夫婦別室だと俺の部屋に乗り込んでくる可能性がある」

 あー……。
 ヴィクトリア朝だったか、摂政公時代だったか。
 酔っぱらった男女が服を着たままでも同衾しちゃえばふしだら。
 温室で二人だけにされて、令嬢のドレスが破れてたら既成事実完成、みたいな感じ?

「なので、入籍してもらえないか」

 渡会さんの表情は必死だった。
 彼は気づいてないだろうけれど、私はワクワクしていた。
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