月の砂漠でプロポーズ
「どうだろうか。也実の戸籍を汚さずにすむ」

　そこは自分のを汚したくないって正直に言おうよ。……仕方ないか。
　仮にも入籍してほしいと相手に頼んでおいて、自分の為にリセットしたいとは言えないか。

　第一、私は渡会さんの家とは格が違い過ぎるもの。

　今回の令嬢と断りたいのだって、渡会さんのご両親はもっと名家のお嬢さんとの結婚を目論んでいるのかもしれない。
　……渡会さん自身はそんな風には見えないけれど。
は家と家との結びつきとか、上流階級ほど政略結婚でまだ存在していそうだ。

　でも。私との婚姻を、他ならぬ渡会さん自身がなかったことにしたいんだ。

「わかった」

　私がようやく肯えば、渡会さんはあからさまにほっとした表情になった。
　そんなに令嬢が嫌なら、誰か別の人を横に並べて『この人がマイ・ベター・ハーフです』とか言えばいいのに。
　あ、それがこの提案か。納得した。

　渡会さんにしてみれば、私はアシスタントだから、実情を理解してもらいやすいし、下手な恋愛感情抜きでフリを出来るからだ。
　……そうですか、フン。
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