月の砂漠でプロポーズ
 直行便だったので十二時間後には到着した。
 二十二時半に日本を飛び立ったから、日本は朝の十時半。
 ドバイは日本の五時間遅れだから、現地時間で五時半である。
 ファーストクラスだから、さっと外に出られし、荷物もすんなりと受け取れた。
 それでも、なんだかんだして六時は過ぎた。

 開いているレストランに入り、ひとまず喉を潤す。
 夫である諒さんはイケメンで国際弁護士で、とても誠実な人で、私は幸せいっぱいである。
 そうだ。束の間の休日を楽しもう。

 ……帰国したら、この人は私のものではなくなっているだろうから。

「ホテルのチェックインが十五時だから、お手軽観光ツアーをしようか」

 諒さんはトランクを受け取ると、タクシー乗り場へと歩いていく。

「お手軽観光ツアー?」

 あの。タクシーとは思えない、ながーい車があるんですけれど。

「まさかね」

 独り言を拾われてしまった。

「そのまさか」

 諒さんはずんずん近づいていく。
 運転手さんがドアを丁寧に開けてくれた。

「也実もチェックしていると思うが。まずはドバイという町の雰囲気を確認しよう」

「うん!」
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