皇子の婚約者になりたくないので天の声に従いました
 その言葉にシャノンは安心したのか、ぽろぽろと大粒の涙を流し始めた。それを隠すかのようにマーティンは彼女の身体を抱きなおす。すると、シャノンもマーティンの背中に手を回すと「怖かった、怖かった」と、声を出して泣いていた。
 マーティンはそんな彼女に「もう大丈夫だから」と声をかけていた。

 ミレーヌが屋上を見上げると、ルネが心配そうにこちらを見ていた。ミレーヌは彼女に向かって、頭の上で右手の指先と左手の指先をくっつけて、丸の形を作った。すると安心したのか、ルネはへなへなとその場に座り込んだ。

 お嬢様たちは、下をのぞいてシャノンの様子を確認だけすると、エドガーの脇をすり抜けて逃げていったらしい。

 エドガーは、座り込むルネに声をかけた。

「立てるか」

「はい」

「君は、女性か」
 なぜかエドガーはそんなことを聞いていた。

「こんな身なりではありますが、一応」
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