皇子の婚約者になりたくないので天の声に従いました
 小さい身体をよりいっそう縮こめて、シャノンが言う。もう、最後の方は聞き取れない。

「え? シャノン。お兄様のこと、もしかして、もしかしなくても、そういうこと?」

 ミレーヌの問いに、シャノンはゆっくりと頷いた。

 どうしよう。こんないい娘が、兄と結婚したら。と、ミレーヌは違うことを考えていた。

 その日の夜は珍しく、本当に珍しく、両親と兄が揃って帰宅した。卒業パーティがあるせいだと思われた。ルネが言った通り、卒業パーティは未来の魔導士と騎士の誕生を祝うためのパーティでもある。
 騎士団長の父と、魔導士団長の母は、間違いなく出席する。むしろ、しなければならない。それの準備も兼ねて帰宅してきたものと思われる。

 夕飯の席で、ミレーヌは口を開いた。
「あの、お兄様。卒業パーティのことで、ご相談があるのですが」

「どうした? エドガーが、ミレーヌからお誘いが無いと嘆いていたが。それに関係することか?」

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