皇子の婚約者になりたくないので天の声に従いました
「いえ、違います。お兄様にエスコートをお願いしたい、という話です」

「ミレーヌ」とそこで口を挟んだのは母親。
「いくら兄のことが好きであっても、そこは婚約者と一緒に出席するものよ」
 やんわりと言う。

「いえ、違います、お母様。お兄様にお願いしたいのは、私の友達のエスコートです」

「そうか、ミレーヌにも友達がいたのか」
 と父親が感心する。
 だから、なぜ友達がいないと思われているのだろうか。

「私だって、友達くらいいます」
 そこでミレーヌは頬を膨らませた。

「友達とは、誰のことだ?」
 マーティンが尋ねる。

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