皇子の婚約者になりたくないので天の声に従いました
 いや、っていうか妹って言ったか、今。
 噂の団長の娘? と副隊長は驚く。

「ミレーヌ、やってみろ。彼は第三騎士隊隊長のエドガーだ」

 ミレーヌは目の前で横になっている男に視線を向けた。体中、顔中、包帯でぐるぐる巻きにされている男。ところどころ、その包帯も赤く染められているのは、恐らく彼の血液によるもの。

「お兄様。この方に私の初めてを捧げればよろしいのですね」

「そうだ」

 なんかおかしいぞ、この兄妹。と副隊長は思ったものの、声にも顔にも出さない。出してはいけない。

 ――ミレーヌ、回復魔法をかけたいところに右手の手の平を当てて。

 天の声が言う。ミレーヌはその声に言われた通りに、まずはエドガーの顔に手の平を当てた。

 ――ほら、どんどん手のひらが温かくなってくるでしょ。

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