皇子の婚約者になりたくないので天の声に従いました
 副隊長が顔の包帯を外そうしている。それをミレーヌは兄の後ろから、こそっと見ている。
 包帯を外されたエドガーは、何のために包帯を巻かれていたかわからない状態になっていた。つまり、それだけ回復した、ということになる。

(ちょっと、初めてのわりにはすごくない?)とミレーヌは心の中で自画自賛。

 ――よくできたわ、ミレーヌ。あなたは騎士でありながらも回復魔法が使えるの。素晴らしいことだわ。それには自信をもってちょうだい。

 ミレーヌは天の声に頷く。騎士でありながら回復魔法も使えるというのは、珍しいことではないのか。
 マーティンは驚いた表情を浮かべて、エドガーを見ていた。

「ここは……」
 どうやらエドガーは動けるようになったようだ。額に手を当て何かを思い出そうとしながら、身体を起こす。

「派手にやられたな、エドガー」
 マーティンも安心したのか、そう声をかけた。

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