皇子の婚約者になりたくないので天の声に従いました
「はい、お父様。私、ミレーヌは、騎士科に進学を希望します。騎士科へ進学し、お父様やお兄様のような立派な騎士になりたいと思っています」
 姿勢を正し、両手をぴしっと伸ばした気を付けの姿勢をして、人間の声とは思えない声を発した父をじっと見据えて、ミレーヌは言った。

「ミレーヌ」
 父親から名を呼ばれた。その声が鋭く聞こえたため、さらにミレーヌは背筋を伸ばしてしまった。背中に緊張が走る。もしかして怒られるのだろうか、という気持ちもあった。考え直せ、と。

「はい」
 少し強張った面持ちでミレーヌは返事をした。

「父や兄のようにと……。とても嬉しいじゃないか」

 父よ、仮にもあなたは騎士団長です。これくらいのことで泣くのはおやめください。とミレーヌが思ったということは、父親が号泣しているからである。
 もう、目と鼻からありとあらゆる液体が流れている。先ほどまでの緊張を返して欲しい。とミレーヌは小さく息を吐いた。

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