皇子の婚約者になりたくないので天の声に従いました
「じゃ、俺も」とロビーが言う。

「ロビー隊長は、既婚者ですよね。こちらは寂しい独身騎士の集まりです。既婚者はご遠慮ください」
 隊員が言った。彼にとって、妻持ち、彼女持ち、婚約者持ちは分かち合えない相手らしい。

「そう、冷たいこと言わさんな。俺のかわいい嫁さんに、誰か紹介してもらおう、な」
 な、と言ったときに、ロビーはマーティンの胸をまさぐっていたその左腕で、隊員の肩を一方的に組んできた。
「君も、なかなかいい身体してるね。マーティンほどじゃないけれど」

 そんなロビーの前に立ちはだかる副隊長。

「ん? 君も俺と肩を組みたいのかな?」

「第五騎士隊副隊長、カーニー・フィルであります」
 と、副隊長は顔の前で右手を真っすぐ斜め上に上げ、名前を名乗ってみた。
「ご紹介のほど、ぜひともお願いいたします」

「あ、アムラン・ダニエルです」
 と、ロビーの腕の中の隊員も小さく右手を斜めに上げた。

「了解、了解。よろしくね。カーニーくんにアムランくん」

 今後、副隊長はカーニーと、そしてとある隊員はアムランと記述することになる。
 名も無き隊員たちに名前が与えられた。これも第四騎士隊隊長、ロビーの力によるもの、なのかもしれない。

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