皇子の婚約者になりたくないので天の声に従いました
 ミレーヌはハンカチでそっとシャノンの濡れているところを拭き始めた。そして、拭きながら言う。

「私でさえもなんとなく状況はわかるんだけれど、これ、どうしましょう。これから卒業に向けてのレポートもあるから、教科書は必要よね。教科書を貸してあげたいけれど、私は騎士科だし」
 そこでミレーヌはハンカチをシャノンに手渡すと、うーん、と腕を組んで考え始めた。

 ――ミレーヌ。急いで騎士団の隊長室に行って書き損じの紙をもらってくるのよ。

 突然、天の声が聞こえた。最近は、わりと大人しい天の声だったのに。

(書き損じの紙?)
 それでも天の声は天の声。ミレーヌを助けてくれるのがこの声なのだ。

 ――そう、それで教科書の水を吸い取ってあげて。元通りにはならないかもしれないけれど、使えるようにはなると思うの。

(でも、隊長室に行って大丈夫かしら?)

< 77 / 125 >

この作品をシェア

pagetop