皇子の婚約者になりたくないので天の声に従いました
 さて、こちらはエドガー。
 廊下が騒がしい。なぜか事務仕事がたまっている彼は、この隊長室で一人、紙にペンを走らせていたところである。
 その騒がしさが、隊長室の扉の前で止まったことに気付いた。すると遠慮がちにノックをされたのだが、エドガーはいつも返事をしない。

 そっと扉が開き「失礼します」という少女の声。
 その声に思わずエドガーは顔をあげた。その扉からこちらを覗いている顔。

「ミレーヌ」
 彼がその名を呼ぶと、彼女は安心したように笑顔を浮かべ。
「エドガー隊長がいらして、よかったです」と言う。

 ミレーヌは自分を探していたのか、とエドガーは思った。
 ペンを置き、立ち上がる。
「何か、用事か?」

「すいませんが、書き損じの紙をいただけないでしょうか」
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