皇子の婚約者になりたくないので天の声に従いました
 エドガーはもう少し違う言葉を期待していたのだが、言われてしまったのはそんなことだった。

「書き損じ? 書き損じならそこにあるからもっていけ」
 他の人にそんなことを尋ねられたら、視線もあげずに答えただろう。いや、むしろ無視だ。だが相手がミレーヌだからか、その問いに答え、そしてその「そこ」をわざわざ案内する。

「何に使うんだ?」

「あの、卒業レポートのために使いたくて」と、ミレーヌは適当に誤魔化した。

 もう、そんな時期か、とエドガーは思った。

「これ、いただきますね」
 ミレーヌは言い、その紙の束を両手で抱えた。

「どこまで運ぶんだ? 持っていこうか」
 とエドガーが言うのだが、彼女は「大丈夫です」と、困ったような笑顔を浮かべて答えた。

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